「LibreOfficeへの移行を検討しているが、実際に他社・他の自治体がどのように導入したか知りたい」「稟議書に具体的な事例を載せたい」――そう感じているIT担当者や経営者の方に向けて、本記事では公開情報・報道情報に基づく国内外の導入事例と、そこから見えてくる成功パターンを整理します。
事例を知ることは、導入の可否を判断する根拠になるだけでなく、自社に合った移行計画を立てるうえでも大きなヒントになります。ぜひ稟議資料の参考としてご活用ください。
免責事項:本記事で紹介する事例はすべて、公開報道情報・公式発表・自治体公開資料に基づいています。数値・状況は記事執筆時点(2026年4月)のものであり、現在の状況と異なる場合があります。最新情報は各機関・企業の公式情報をご確認ください。
なぜ事例を知ることが重要か
新しいソフトウェアの導入を検討する際、社内での合意形成(稟議)は避けて通れません。
特にオフィスソフトは日常業務の基盤であるため、「本当に使えるのか」「業務が止まらないか」という懸念が上がりやすい領域です。
そこで効果的なのが「他社・他の自治体が実際に移行した」という事実を示すことです。事例には次のような価値があります。
- 稟議の根拠になる:「すでに○○市が採用している」という情報は、意思決定者の不安を和らげます
- 想定リスクを先読みできる:他者の失敗・苦労を知ることで、自社での対策を事前に立てられます
- 成功パターンを流用できる:段階的展開や研修体制など、再現性のある手法を参考にできます
では、実際にどのような組織がLibreOfficeを採用しているのでしょうか。海外の大規模事例から順に見ていきましょう。
海外の主な導入事例(公開情報に基づく)
LibreOfficeは世界各国の自治体・政府機関での採用実績があります。
以下は公開報道情報・公式発表をもとにまとめた代表的な事例です。
フランス国家憲兵隊(Gendarmerie nationale)— 約9万台規模でオープンソースへ移行(公開報道情報)
フランス国家憲兵隊は、オープンソースソフトウェアへの移行を積極的に進めた組織として世界的に注目されています。
複数の報道および公式発表によると、WindowsやMicrosoft Officeからの移行プロジェクトの一環として、約9万台規模のPCのうち多数にLibreOffice(当初はOpenOffice.orgを含む)が展開されたとされています(報道情報に基づく)。
この事例が示す重要な点は、官公庁・セキュリティ機関のような保守的な組織でも、計画的な移行とサポート体制の整備によってオープンソースオフィスへの移行が実現できることです。
注:具体的な台数・コスト削減額は各時期の報道によって異なります。最新情報はフランス国家憲兵隊の公式情報源をご参照ください。
イタリア・トリノ市 – 自治体規模でのODF移行
イタリア第4の都市トリノ市は、市の行政システムにおいてMicrosoft OfficeからLibreOffice(およびOpenDocument形式)への移行を進めたことが複数のメディアで報道されています(公開報道情報に基づく)。
特に注目される点は、行政文書の標準形式をODF(OpenDocument Format)に切り替えたことで、特定ベンダーへの依存(ベンダーロックイン)を回避するという明確な政策方針のもとで移行が進められた点です。
トリノ市の事例は「コスト削減」だけでなく「データの永続性・独立性の確保」という目的でのLibreOffice採用が有効であることを示しています。
注:移行の進捗状況や現在の運用状況については、トリノ市の公式情報をご確認ください。
ドイツ・ミュンヘン市 – 移行の経緯と現状(一部方針変更あり)
ドイツのミュンヘン市は「LiMux(Linux + Munich)」と呼ばれるプロジェクトで、市の行政システム全体をLinux+OpenOffice.org(後にLibreOfficeへ移行)で運用するという世界的に注目された取り組みを行いました(公開情報に基づく)。
ただし、同市はその後一部の業務でMicrosoft製品への再移行を決定したことも広く報道されています。
再移行の背景としては、市長交代に伴う政治的・行政的な方針変更が主要因として報じられており、加えて「他の行政機関との文書互換性の問題」「システム統合上の課題」なども指摘されています(いずれも報道情報に基づく)。
ミュンヘン市の事例から学べることは、「導入すれば終わり」ではなく、継続的な互換性管理とサポート体制が成功の鍵であるという点です。
注:ミュンヘン市のIT方針はその後も変化しており、現在の状況は公式情報をご確認ください。
日本国内の動向(公開情報に基づく)
海外に比べると日本国内での大規模移行事例の公開情報は少ない傾向にありますが、いくつかの先進的な自治体・教育機関での取り組みが公開されています。
会津若松市のODF移行事例
福島県会津若松市は、日本国内の自治体においてODF(OpenDocument Format)移行を積極的に推進した先進事例として広く知られています。
市の公式発表や複数の報道によると、行政文書の作成・保存形式をODFに移行し、LibreOfficeを含むオープンソースオフィスソフトの活用を推進しました(公開情報に基づく)。
この取り組みの背景には、ソフトウェアライセンスコストの削減だけでなく、行政情報の長期保存・電子行政の推進という政策的な目的もあり、日本の自治体におけるODF活用のモデルケースとして各所で参照されています。
また、同市はODF推進に向けた庁内研修や、職員向けの操作ガイド整備にも取り組んだことが公開情報として確認されており、段階的な移行プロセスを踏んだ国内事例として参考になります。
注:会津若松市の現在のIT施策については、同市公式サイトの情報をご参照ください。
その他自治体・教育機関での採用動向
会津若松市以外にも、日本国内では以下のような動向が公開情報として確認されています(各情報源の公開情報に基づく)。
- 教育機関での採用:一部の公立学校・大学において、コスト削減を目的としてLibreOfficeをコンピュータ室の標準ソフトとして採用している事例が報告されています
- デジタル庁・総務省のODF推進方針:日本政府においても、行政文書のオープンフォーマット推進に関する議論が継続しており、ODF互換ソフトの活用が政策的な文脈でも言及されています
- 中小企業・スタートアップでの採用:初期コスト削減を重視するスタートアップや中小企業が、Microsoft 365の代替としてLibreOfficeを採用するケースも見られます
なお、日本国内では海外と比べて移行事例の公開情報が限られています。
アイティワード株式会社では、実際の導入支援を通じた知見をもとに、お客様の状況に応じた具体的なアドバイスを提供しています。
導入事例から見えてくる共通の成功パターン
国内外の事例を横断して分析すると、LibreOffice導入に成功した組織には3つの共通した取り組みが見られます。
成功要因1. 移行前の詳細調査と計画
成功事例に共通するのは、「とりあえず導入してみる」ではなく、事前の現状調査と移行計画の策定に十分な時間をかけている点です。
具体的には以下の調査が重要とされています。
- 現在使用しているMicrosoft Officeのバージョンと機能の棚卸し
- 社内で使用しているマクロ(VBA)の数と複雑度の把握
- 外部との文書やり取りで必要なファイル形式の確認
- LibreOfficeで代替できない機能の特定と対処方針の決定
特にマクロの調査は重要で、複雑なVBAマクロが多い組織ほど移行コストが高まる傾向があります。
事前に「移行が容易な部署」と「サポートが必要な部署」を分類しておくことが成功への近道です。
成功要因2. 段階的な展開(パイロット導入)
一気に全社展開するのではなく、まず少数の部署・チームでパイロット運用を行い、課題を洗い出してから本格展開するアプローチが成功率を高めます。
パイロット導入の進め方の例:
- マクロ利用が少なく、外部との文書やり取りが少ない部署を選定
- 1〜3ヶ月間の試験運用を実施し、現場の声を収集
- 発生した問題の解決策を文書化し、全社展開時のFAQとして整備
- パイロット部署のメンバーを「LibreOffice推進担当」として活用
この段階的アプローチにより、全社展開時のリスクを事前に把握し対策を立てることができ、経営層への報告においても「試験運用済み」という信頼性が生まれます。
成功要因3. 研修・サポート体制の整備
ミュンヘン市の事例が示すように、ソフトウェアの導入そのものよりも「継続的なサポート体制」が長期的な成功を左右します。
効果的な研修・サポート体制として次の要素が挙げられます。
- 操作マニュアルの整備:「ExcelのこのメニューはCalcではここにある」という対応表形式のガイドが有効
- 社内問い合わせ窓口の設置:最初の3〜6ヶ月間は特に問い合わせが集中するため、対応窓口を明確にしておく
- 外部サポートの契約:社内のIT担当者だけで対応しきれない技術的な問題に備え、専門業者との契約を検討する
特に外部の専門サポートを活用する場合は、LibreOfficeに精通した業者を選ぶことが重要です。
アイティワード株式会社は、英国Collabora Productivity社の日本正規代理店として、LibreOfficeの専門的なサポートを提供しています。
Collabora Productivity社は世界最大規模のLibreOffice認定エンジニアチームを擁しており、その技術力を基盤に日本企業向けのサポートを行っています。
中小企業・SMBへの応用
ここまで紹介した事例は大規模な組織のものが多いですが、中小企業においても同じ成功パターンが適用可能です。
むしろ、規模が小さい分だけ次のメリットがあります。
- 意思決定が速い:少人数のため、パイロット導入から全社展開までの期間を短縮できる
- コスト削減効果が相対的に大きい:従業員数が少ない場合でも、ライセンスコスト削減の割合は変わらない
- マクロ依存度が低い場合が多い:大企業に比べて複雑なVBAマクロを利用しているケースが少なく、移行障壁が低い
中小企業がLibreOffice移行を検討する際の現実的なアプローチとして、以下のステップを推奨します。
- 現在のMicrosoft 365のコストを確認する:従業員数×年間ライセンス費用を算出し、削減効果をシミュレーションする
- マクロの有無を確認する:業務で使っているExcelマクロやWordマクロの複雑度を把握する
- 外部連携ファイル形式を確認する:取引先との文書やり取りで.xlsx/.docx形式が必須かを確認する
- 専門業者への相談:自社の状況に合った移行可否と必要なサポートを専門家に診断してもらう
特にステップ4の「専門業者への相談」は、自社だけで判断が難しいケースの多くを解決します。
移行できるかどうかの判断そのものを、コストをかけずに相談できる窓口を活用することをお勧めします。
なお、コスト削減の具体的な試算方法については、LibreOffice導入で年間コストをどのくらい削減できるか?シミュレーション付きもあわせてご覧ください。
アイティワードの支援で安全に導入できる
上記の大規模事例で得られた知見は、中小企業の導入にも活かすことができます。
アイティワード株式会社では、企業の規模や業務内容に合わせた導入計画の策定を支援しています。
本記事で紹介した「成功パターン」を実現するための支援として、以下のサービスを提供しています。
- 導入前の現状調査・移行可否診断:現在のOffice環境を診断し、LibreOffice移行に適しているか客観的にお伝えします
- パイロット導入支援:試験導入の設計から課題整理まで伴走します
- 社員向け操作研修:「ExcelからCalcへ」「WordからWriterへ」という実践的なトレーニングを提供します
- 導入後の継続サポート:問い合わせ対応・アップデート管理・トラブル対応を継続的に支援します
「まず自社の状況を相談したい」という段階から、お気軽にご連絡ください。
まとめ
本記事では、公開情報に基づく国内外のLibreOffice導入事例と、その成功パターンを整理しました。
- フランス国家憲兵隊:大規模組織でも段階的移行により実現(報道情報に基づく)
- イタリア・トリノ市:ベンダーロックイン回避を目的としたODF移行(報道情報に基づく)
- ドイツ・ミュンヘン市:移行と一部再移行の経緯から「継続サポートの重要性」を学べる事例(報道情報に基づく)
- 会津若松市:日本国内での先進的なODF移行事例(公開情報に基づく)
共通する成功要因は「移行前の詳細調査」「段階的な展開」「研修・サポート体制の整備」の3点です。
中小企業においても同様のアプローチで移行を実現できます。
「自社でも導入できるのか」「どこから始めればいいか」という疑問をお持ちの方は、ぜひアイティワードにご相談ください。